No.494(Web版144号)2
SFでよく扱われる織田信長
中村達彦
大河ドラマは来年「どうする家康」と言う徳川家康を主人公にした作品を放送するとのこと。浜松もドラマの舞台になる。
話の中では、家康の幼い時に登場し、長く同盟関係にあった織田信長もレギュラーで、ドラマ半ばまで出演するだろう。
昔から大河ドラマや戦国時代を扱ったTVドラマや映画に、信長と家康はコンビを組んで出てきた。家康にとって、信長は友でもあり、超えなくてはいけない強敵でもある。
信長は歴史上の人物で残酷な行為が多いが人気が高い。常識を覆し、果断で即実行な性格、天下統一目前に本能寺の変で死に追いやられた悲劇性も人気を集めたのであろう。
来年1月に信長を主人公にした映画が東映で封切られるとのこと。脚本は「どうする家康」と同じ古沢良太。
家康や豊臣秀吉を主人公にした大河ドラマにも信長は登場するが、その俳優演技が主人公以上に注目されることもある。
SFでも「もし信長が本能寺の変で死ななかったら」とか「タイムスリップが信長に絡む」と言うアイデアで取り上げられている。
有名なのは、半村良の「戦国自衛隊」。自衛隊が現代の兵器を装備して、戦国時代にタイムスリップ。次々に戦国大名を討っていくが、最後にその力を恐れた者に襲われ、京都の寺で討ち取られる。自衛隊の指揮官は自分たちが信長だと解する。
「戦国自衛隊」は1979年に映画化され、「歴史は俺たちに なにをさせようとしているのか?」のキャッチコピーが話題になった。
2005年にも、福井晴敏にリメイクされ、「戦国自衛隊1549」と再映画化された。
自衛隊が戦国時代にタイムスリップするのは同じだが、設定や展開は全く異なる。
最初に自衛隊の一部隊が戦国時代にタイムスリップ。戦いを余儀なくされ、信長を倒す。何年かして新たな部隊が、先に飛ばされた部隊を救出するためタイムスリップする。元の世界ではブラックホールが発生しており、被害の拡大を防ぐ目的もあった。だが最初に飛ばされた自衛隊は、信長を自称し岐阜に兵を進め、のみならず核爆弾を開発するなど独自の国づくりを進めていた。話し合うも相容れず、戦国時代の人々の思惑も含め、自衛隊同士の対決に。
近年2021年3月には、高校が戦国時代にタイムスリップ。生徒たちがスポーツや戦国時代の知識を活かして襲いかかる武士に対抗する「ブレイブ﹣群青春記﹣」がコミックであり、映画にもなった。信長や家康が登場し高校生に絡む。
「ブレイブ﹣群青春記﹣」の主人公は新田真剣佑。79年の「戦国自衛隊」で主演した千葉真一と親子である。
90年代に、佐藤大輔や井沢元彦、歴史にもSFにも通じた作家が、信長が本能寺の変前に自分が襲われることを知り、窮地を脱したことからその後の日本の歴史が変わってしまう小説を書いた。
信長が日本を統一した後、南海ルートでフィリピン、インドネシアへ版図を築き、西洋からの船団と対決する。
84年にプレイヤーが信長の立場になって天下統一をするコンピュータシミュレーションゲーム「信長の野望」が誕生。大ヒット、多くのファンを獲得した。以後も新作が現在まで続く。
コンピュータシミュレーションゲームで1993年「GE・TENⅡ」が発表された。本能寺の変が起きず、日本を統一した信長が1585年に海外へ雄飛する内容だ。
2010年代、信長を題材にしたタイムスリップものが次々にマンガ、映像で発表され話題になった。
「信長協奏曲」ヤンキー少年が戦国時代にタイムスリップ、信長と入れ替わってしまい自分が信長を演じることになるが、彼は歴史音痴であった。「信長のシェフ」現代の料理人がやはりタイムスリップ、天下統一を進める信長に仕えることになり、料理や歴史の知識で生きていく。「アシガール」高校生の少女が弟の作ったタイムマシンで戦国時代へ。領主の若君に恋をして守ろうと奮闘、やがて隣国の信長と対する。3作ともTVドラマ化、それぞれの面白さがある。
2017年1月には「本能寺ホテル」と言うオリジナル作品の映画が封切られた。
悩みを抱える女性が京都のあるホテルで突然、本能寺の変前夜の京都へ、そこで森蘭丸や信長に会う。
彼女は本能寺の変について伝えるが……。
他には「ドリフターズ」と言うマンガがある(現在ストップしているが)。アニメにもなった。戦場で行方不明になった英雄や軍人、彼らは異世界で、虐げられていたエルフを助ける。信長は本能寺の変で混乱の中、異世界に迷い込み、島津豊久や那須与一と組んで戦う。敵軍には土方歳三や明智光秀がいる。
最近では夏にドラマが放送された「新・信長公記〜クラスメイトは戦国武将〜」がタイムスリップではないSF設定で登場した。
マンガが原作で、マッドサイエンティストにクローン再生された戦国武将の生徒同士戦う。巻き込まれた女生徒が主人公。信長が再生された高校生も登場する(他にも幾多の戦国武将が)。生徒たちを待つ運命は。
最も印象的な作品は、90年代半ばに連載された志野靖史のギャグマンガ「内閣総理大臣織田信長」。
突然、信長や秀吉、家康が現代にタイムスリップ、内閣を組織する。
我儘で戦国時代の思考の信長は、我が道を行き、常識外れな手段で様々な問題に挑む。
同盟を強化しようとするアメリカ大統領に政略結婚を持ちかけたり、夫と不仲なイギリス皇太子后を仲直りさせようとわざと皇太子の悪口を言い、かえって仲を悪くさせたり(笑)、誰も思いつかないことをする。
読んでいて「何だこれは」と笑ってしまう。
これからも信長を扱ったSFが登場するだろう。
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