No.496(Web版146号)1
「ブラックパンサー」「ブラックアダム」のことなど
中嶋康年
近頃のヒーロー映画、ドラマは「ブラックパンサー」「ブラックアダム」「仮面ライダーBLACK SUN」など、なぜか「ブラック」が付いたものが続いた。巷ではBLACK FRIDAYとか称するセールが喧伝され、こちらも「ブラック」だ。
11月11日に公開された「ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー」は2018年の「ブラックパンサー」の続編。ワカンダ国王ティ・チャラ役の俳優チャドウィック・ボーズマンが43歳で結腸癌のため亡くなったことで、ボーズマンがブラックパンサーを演じる続編の計画ができていたにもかかわらず、脚本を変更して後継者に「ブラックパンサー」を引き継ぐ物語になったという。ワカンダはビブラニウムという隕石由来の鉱石の唯一の産出国であることで技術立国したのだが、このビブラニウムはカリブの海底にもあって、それを利用していたのが、侵略者に追われ海底に逃れたマヤ文明の末裔タロカン王国。ここの王ネイモアが水中を高速で移動し、空中も飛行できるという破格のミュータント。このキャラクター、コミックでは「サブマリナー」という名前で1939年に初登場。同じような設定のDC「アクアマン」のコミックは1941年が初登場なのだが、映画はこちらが先だったためコミックではどちらもアトランティスの王ということになっているのでマーベル映画では「タロカン」という新しい国を作らざるを得なくなった。アトランティスがだめならマヤ文明と結び付けようというのもずいぶん強引な感じはするが、サブマリナーは踵に羽がついている設定なので、羽の神話と結びつけようとしたのだろう。マヤ・アステカ文明は「羽毛の蛇の神」が有名だが、アステカのケツァルコアトルは海とは関わりが薄いからマヤのククルカンにしよう、マヤなら海底遺跡も数多く見つかっているし、踵に羽と言えば、ギリシャ神話のヘルメスだが、こちらも海には関係なさそうだし、地理的にも遠いということかもしれない。とはいえ、やはりマヤ=海というイメージはあまりないので、海のスーパーヒーローとしてはアクアマンの方が有利。後継者という面では、アイアンマンの後継者「アイアンハート」もこの映画で登場する。しかし、トニー・スタークとの関わりは一切描かれない。
12月2日に公開された「ブラックアダム」はDCの映画。もともと「シャザム!」の宿敵として登場したのがブラックアダムなので、映画の中にシャザムが出てこないのは片手落ちじゃないのと思ったが、後でネット内の解説を見ると、ここでシャザムまで出すと余りに詰め込みすぎで収拾がつかなくなると踏んだからだそうな。確かに「ブラックパンサー」にしても、背後に膨大なストーリーがあるので、あれもこれも触れられていないと思ったが、全部すっ飛ばして描いて正解だったかもしれない。このブラックアダムに相対する「JSA(ジャスティス・ソサエティ・オブ・アメリカ)」は「ジャスティスリーグ(JLA)」(2017)の前身の組織という設定なのだが、この映画ではアメリカ政府に派遣され、即興的に組まされた4人のチームだ。若手二人と違ってベテランのドクター・フェイトとホークマンの二人はコミックではある程度メジャーなのだが、主役のブラックアダムを含め、全員が映画初登場。たいした説明もなくあらわれて活躍していくのだが、これがなかなか面白かった。マーベルに似たようなキャラがいるのも節操がなくてよい。DC映画としては、今後「スーパーマン」との絡みを計画しているようだが、ちょっとキャラクターの性格が違うんじゃないのと思う。
| 固定リンク
コメント