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No.497(Web版147号)3

 ますむらひろし画のふたつの “銀河鉄道の夜” についてあれこれ

 by 渡辺 ユリア

 1983年初版発行の前者、その2年の後に描かれた後者。前者は112p、後者は198p。比べてみると色々な場面が前者よりもくわしく描かれ内容が深い。物語の導入部分が前者とは違っています。こちらのほうが物語りに入りやすい。夜のにぎやかな街の祭りの場面。人々は街の広場に集まって、一緒に “星めぐりの歌” を歌ったり、花火をもやしたりしている。ジョバンニの父さんと母さんの事情も描かれています。牛乳が買えなかった事。そして帰り道でザネリたちに酷い言葉をかけられたりした事。そして彼は山のほうへと走ってゆく。背の高い木立ちや真っ暗な草を抜けて、一本の道を辿って。にわかにがらんと空が開け、山の頂上に行く。そこで不思議な体験をするのですが、前者は光がまたたくといつの間にか列車の座席にいるのに対して、後者は光がまたたき、遠くからセロのような声が聞こえてくるのです。そして光がぐーんと伸びて広がり・・・何時の間にかジョバンニは列車の座席にいるのです。カムパネルラとの再会。そして列車での旅が始まる。北十字とプリオシン海岸、いろいろな人たちとの出会いと別れ。そしてカムパネルラとどこまでも行こう・・・と言った事。でも、不意にカムパネルラが消えた時、彼は大きな声を挙げて泣きました。前者はそこで目が醒め、元いた山の頂上にいる事に気ずいたのに対し、後者は、不意に「お前はいったい何を泣いているの・・」という声。その人物は説明する。それには原作者の賢治の想いが詰まっているように感じます。ではこの辺で。

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