No.497(Web版147号)1
My BESTS 2022
中嶋 康年
1「爆発処理班の遭遇したスピン」佐藤 究
昨年の直木賞「テスカトリポカ」の作者、佐藤究の短編集。爆発物の解除に量子論、例の「シュレーディンガーの猫」理論を絡めたミステリの表題作。CGクリエイターからクリーチャー・デザイナーになり、実物のキメラを創作してしまう「ジェリーウォーカー」など、SF作家としても通用する多彩な作家だ。もっとほかの作品も読んでみたくなる。
2「プロジェクト・ヘイル・メアリー」アンディ・ウィアー
一人になりながら、それでも頑張って事をなしていく。でも、ほんとは一人じゃない。背後には仲間たちのバックアップがついている。「火星の人」もそんな話だったが、今回は最後の最後が効いている。
3「三体 X」宝樹
SF作家の宝樹が「三体」ファンとして、原作者も描かなかったあんなことこんなことを書いてしまったという「公式外伝」。宝樹自身の短編も邦訳されているが、なかなか面白い話を書く人だと思う。
4「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」マーベル・スタジオ(映画)
前作「ファー・フロム・ホーム」でスパイダーマンの正体はピーター・パーカーだと暴かれてしまった。これを何とかしたいと思い、ドクター・ストレンジに人々の記憶から自分の正体の記憶を消してもらうように頼みに行くが、友人には覚えていてもらいたいと思って呪文の邪魔してしまう。その結果、魔法は失敗、多元宇宙に穴をあけてしまうことになった。この3部作最終作のキモはその多元宇宙から別のスパイダーマンが来てしまうところ。スパイダーマンは過去2回映画化されており、違う役者が演じていたのだが、その二人が別次元のスパイダーマンとして共演した。
5「サイバーパンク エッジランナーズ」(アニメ)TRIGGER NETFLIX
2020年のアクションRPG「Cyberpunk2077」のアニメ化。ゲームの方は知らなかったのだが、鮮烈な色遣い、大胆なアクションが素晴らしい。人体改造を繰り返すアウトローの傭兵団に加入することになった、人体改造に耐性のある若者の物語。
6「黒衣の聖母」山田風太郎
2022年は山田風太郎生誕100年ということで、数多くの出版があった。山田風太郎というと、忍者物だが、これは太平洋戦争の時代の推理短編集。「戦艦陸奥」「潜艦呂号99浮上せず」「裸の島」「腐乱の神話」など全10編はどれもすごい。
7「兎の島」エルビラ・ナバロ
〈スパニッシュ・ホラー文芸〉がブームと帯には書いてあるが、実はこれが最初の1冊。ピラール・キンタナ「雌犬」、グアダルーペ・ネッテル「赤い魚の夫婦」もその系列といわれるが、「スパニッシュ・ホラー」とは銘打っていない。ネッテルはメキシコ人だし。今どき珍しい函入りで装丁に凝った短編集。
8「リコリス・リコイル」(アニメ)A-1Pictures NETFLIX/AmazonPrime
今年のアニメは?と聞くと、「リコリコだね」という声が聞こえたほどだった。
9「極めて私的な超能力」チャン・ガンミョン
今年は韓国のSFが数多く紹介され、何冊か読んでみてどうもあまりピンとくるものがなかったが、この短編集はちょっとハード系ですごいと思った。ごく短い短編とちょっと長めの短編が混じっている。「定時に服用してください」「アラスカのアイヒマン」「極めて私的な超能力」「データの時代の愛」がよかった。
10「ブラックアダム」ジャウマ・コレット=セラ監督(映画)
興行的には失敗とされ、続編は制作されないことに早々と決まったそうだが、個人的には、かなり楽しめた。最近DCではスーパーマンの俳優がまたもや変わることになりそうだとか、興行的にも成功したワンダーウーマンの続編は作らないことに決まったり、撮影も終わっていた「バットガール」は公開しないことになったり、あまりいいニュースはない。
その他、印象に残った作品(順不同)
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SFマンガ傑作選、半鐘の怪・半七捕物帳、文豪たちの怪しい宴、獣たちの海、メキシカン・ゴシック、疫神記、雌犬、怪物のゲーム、マルドゥック・アノニマス7、赤い蝋人形、スターシェイカーマーベル・グラフィックノベル・コレクション(以上、書籍)
ジョジョの奇妙な冒険:ストーン・オーシャン、イン・フロム・ザ・コールド、ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪、サマータイム・レンダ、シーハルク:ザ・アトーニー、シン・ウルトラマン、ウェンズデー、BLEACH 千年血戦篇、ソー:ラブ&サンダー、ブラックパンサー:ワカンダ・フォーエバー、ドクター・ストレンジ:マルチバース・オブ・マッドネス、攻殻機動隊 SAC-2045、サンドマン、ムーンナイト、MSマーベル、すべて忘れてしまうから、ペリフェラル〜接続された未来〜(以上映像作品)
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