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No.501(Web版151号)3

 SFか否か

 中村達彦

 チャットGPTをはじめ、自律AIの躍進が注目されている。
 AIが文章を考えて書く。大学や企業、市役所や国家でも、その使用についてそれぞれ賛否の声分かれているそうで。
 ラブレターやレポートに留まらず、いずれは創作をやり、人間より面白いSFを書くとギャグみたいになるかもしれない。著作権などの問題もあるが。
 既に故人のマンガや歌をAIで復活させている。昔のSFで取り上げられてきた機械が知性を持ち、人間に取って代わろうとする話が信憑を帯びて来る。
 ウクライナの戦争、アメリカや中国でも、ハイブリッド戦やフェイクニュースでAIによる情報操作が話題になっている。
 一般人が当たり前のようにスマホを持ち、画像や文章を作ってSNSで発信する。50年前には考えられなかった。SFだ。
 話は変わるが、冬に書いた記事で質問があった。SFかと思っていた作品がじゃなかったと言われたことはなかったかと。
 それ程SFについて精通していないし、友人と激しく意見を交わしたことがなかったが、時々、SF作品とされるものを読んで「これSFか?」と思ったことはある。
 作品のジャンルにSFと銘打たれたし、自分の中で「これはSFだ」と幾つかのルールがあり、頭の中でそれをクリアするか否かで、SFかどうかを判断した。
 最初は文学だけであった日本SFは、マンガやアニメ、特撮も取り込んでいく。
 70年代に、劇中にUFOが出てくるだけでSFとなったり、設定考証を聞いて「あれっ?」と首を傾げるSFアニメが幾つかあった(ヒットした作品もある)。
 かつて書かれたSF小説を今思い返してみると「これファンタジーだろ」と言う作品も幾つかある。大御所と言われるSF作家も「これSFか」の話を書いているが、特に福島正美の「異次元失踪」は今でも印象深い。
 中学校教師が主人公で、生徒たちが、人間消失の事件を話し合っている場に出くわしたが、その後、生徒の一人が行方不明に。彼が異次元消失に巻き込まれたかと思うようなことが相次ぎ、教師友人のSF作家が絡んでくる。教師自身にも、異次元が迫るような。そして意外な展開に。
 結末はSFではない。福島はSFマガジン編集長を務めたSF通だが最初から意図して本作を書いたのだろう。現代にも通じている警鐘が幾つもある。
 89年にある著名なSF作家と会わせていただくことがあったが、その方は、当時大ヒットした別の人のSF作品について「あれはSFでない」と一刀両断したものだ……。
 細かい設定考証がSFにつきまとい、突き詰めていかなくてはいかないが、難すぎてSF離れを招いてしまうことも。
 この少し前からSFより、ファンタジーが勢い強くなる。ファンタジーの代表作「グインサーガ」もSFが隠れている。
 SFがファンタジーとされたり、ライトノベルに流れて行ったり、或いはホラーやミステリーなど他ジャンルと融合し、SFか否かの境目が怪しくなる。
 90年代に入り、SFと銘打たれていれば売れないと言われるまでの冬の時代が続く。
 瀬名秀明の「パラサイト・イブ」。ホラー大賞を受賞し、映画やゲームにもなっている。細胞遺伝子のミトコンドリアが自我を持ち、暴走するが、SFとも取れる。
「パラサイト・イブ」で注目された瀬名はSF「ブレイン・バレー」などを発表、SF作家クラブ会長を務めた。
 同時期に、鈴木光司の「リング」「らせん」が注目された。呪いのビデオを巡るホラーであった「リング」続編である「らせん」は、特異ウイルスの発生がバックに。
「リング」「らせん」が98年に映画化された時、マルチメディア戦略で3作目をどうするか、悩んだそうで。
「リング」「らせん」の舞台はコンピューターで構築された現実そっくりに作られた架空世界で、ウイルスや登場人物が架空世界のみならず現実世界にも影響を与えていると、SFの謎解きが。主人公の正体は……。
 この時期には、梅原克文を忘れてはいけない。「二重螺旋の悪魔」「ソリトンの悪魔」「カムナビ」など、ホラー、伝奇がかった大作を発表。自分の作品をSFではなくサイファイとして、SF論争で物議をかもした。
 時は流れ、星雲賞のメディア部門で2016年に「ガールズ&パンツァー劇場版」、2018年に「けものフレンズ」が受賞した時、「作品としては面白いけど、これSFかね」と思ったが。
 90年に開始、現在もTVスペシャルで続いているフジテレビの「世にも奇妙な物語」は多くの不思議を扱ったドラマだが、SFの小説やマンガを原作にしたものも多い。いつか星雲賞メディア部門を受賞して欲しい。
 最近WBCに熱狂したが、そのTV放送で流れたクレディセゾンのCM。複数の宇宙人の乗る宇宙ステーションに、宇宙服を着た佐々木希演じる地球人が絡む内容で、幾つも作られたがこれはSFだろう。
 去年星新一のショートショートがNHK夜ドラで放送されたが、今年は6月藤子・F・不二雄のSFマンガが取り上げられた。
 実写ドラマだが、原作マンガの面白さを俳優たちが再現している。
 他にも、あちこちでSFを入れたドラマが。
 日本SFは、衰退したように見えるが、細分化し、溶け込んでいたのだ。

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