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2023年9月

No.503(Web版153号)4

 藤子・F・不二雄先生のSF短編コンプリート・ワークス(全10巻)が少しづつ出ました!!

 by 渡辺ユリア

 5/29、6/29に出ました。今のところバラバラに5巻出ています。通常版は各¥1110円です。ちなみに下の絵(PAPERMOON印刷版参照)はSFマガジン6月号(今年の)のうら表紙のコピーです。
 TVドラマ化した原作もあります。「流血鬼」「親子とりかえ」などです。
               2023.7.20 yullia

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No.503(Web版153号)3

 架空戦記について(前編)

 中村達彦

 毎年8月は、広島長崎の原爆投下や終戦で太平洋戦争を思い起こさせる。
 SFジャンルの中に歴史改変があり、大敗した太平洋戦争に勝っていたらと言う架空戦記がある。
 幕末から、日本は欧米に侵略されるかもしれないと危機感を持ち、日露戦争後もアメリカとの衝突を意識した。
 昭和初期、平田晋作の書いた「昭和遊撃隊」「新戦艦高千穂」と言った架空戦記小説が大ヒットした。当時の状況を細かく反映し、迫力ある文章は今読んでも圧巻だ。
 1940年にアメリカでは「夜の稲妻」と言う小説が書かれ、40年後に、日本でも翻訳刊行された。
 ドイツがイギリスを降して、1945年にソ連や日本とアメリカに侵攻する。ニューヨークもドイツに占領され、首脳会議が。
 ドイツは威力が高い特殊爆弾を開発、ヒトラーはアメリカに服従を迫る……。
 この小説のすぐ後、ソ連とドイツの戦争が起こり、アメリカも参戦し予言は外れた。
 実際の歴史は、日露戦争で勝利し世界を驚かせた日本は、40年後太平洋戦争で未曾有の敗北を。1発の爆弾で都市が壊滅する原子爆弾が使用されるSF的展開で幕を閉じた。
 敗戦、アメリカの進駐は、文化的なものも入って、日本のSFも大きく変わった。同時に戦争に負けたショックやアメリカへのコンプレックスが潜在的に刻みつく。
 元、陸軍軍人で進駐軍の持ってきた書籍でSFに入った矢野徹は、1969年に「地球0年」を発表した。
 クリスマスイブに偶発的に全面核戦争が勃発。アメリカやソ連は壊滅する。世界に広がる惨禍、無秩序な状態。
 日本は関東が大きな被害を受けるが、国家の機能は残り、自衛隊がカリフォルニアへ進駐する。様々な思惑で迎える住民。
 核戦争を描いたのは、小松左京「復活の日」、東宝の映画「世界大戦争」がある。外国でも核戦争が起きた話が多い。
 前にも書いたが、広島長崎の後、核兵器は78年間、戦争で一度も使われていない。今後もそうであるように祈りたい。
「地球0年」の8年前、小松左京に「地には平和を」が書かれた。
 終戦が歴史改変の犯罪で本土決戦になる。負傷した少年兵がタイムパトロールと出会い、真実を聞かされる。
 1975年に豊田有恒は、「タイムスリップ大戦争」を発表。
 突如、日本列島が国民ごと、太平洋戦争前の世界にタイムスリップ。日本は平和共存を訴えるが、受け入れられず、アメリカ空母による東京空襲があり、戦争が始まる。自衛隊の戦力で優勢に立ち、日本は世界のキャスティングボードを握った。
 しかし19世紀半ば、13世紀後半とタイムスリップは続いていく。
 79年には「パラレルワールド大戦争」を。
 フリーのカメラマン、仙波五郎は取材で戦争末期に大本営が移転する予定だった長野県松代へ。そこでタイムスリップ現象が起こり、戦争末期と現代が繋がったタイムトンネルが形成される。
 アメリカ軍の攻撃に息絶え絶えの大日本帝国を、未来の日本は援助する。食料を供給するのに続いて、自衛隊の介入も。
 五郎は戦争末期の世界へ、東京へ向かう。
 援助の物資や未来の自衛隊の兵器を得た日本軍航空隊は、反撃に成功。
 予想外の反撃を受け、アメリカ軍は関東への侵攻を急ぎ、歴史は変わっていく。
 豊田は、他にもタイムスリップを扱った作品が多い。架空戦記も度々書いている。
 1971年に、推理小説がメインだが、SFも手がけた高木彬光が「連合艦隊ついに勝つ」と言う架空戦記小説を書いた。
 ミッドウェー海戦やレイテ海戦では、もしかすると日本が勝てたかもしれない。戦記マニアがタイムスリップして、神様の使いと称して、日本軍指揮官にアドバイスを行い、日本が負ける海戦が勝利すると言うもの。
 結局、海戦で勝ってもその後、日本が戦争に負ける大局は変わらず、タイムスリップも実は夢おちであった。
 外国でもデイヴィッド・ウェストハイマーの「本土決戦 日本侵攻・昭和20年11月」。
 日本が南九州で本土決戦になっていたら、タイムスリップとかSF要素はない。日米のいろんな人物の物語で構成され、軍人のみならず民間人も登場する。
 多くのSF作品が注目されたフィリップ・キンドレド・ディックが1963年に書いた「高い城の男」も忘れてはいけない。
 第2次世界大戦で枢軸国が勝利した世界において、分割されたアメリカやソ連、イギリスが戦争に勝利する小説が出回り、その作者を追って人々が流離う。
「高い城の男」は、近年4シーズンのドラマ化されている。
 1987年に、タイムスリップしてドイツが勝利した世界を未来から改変するホーガンの「プロテウス・オペレーション」が。
 日本人には太平洋戦争に大敗した。戦争は嫌だ。と言う気持ちの反面、日本は最強の陸海軍を持ち、戦艦大和やゼロ戦と言う世界を脅かせた兵器を作った。侵略を行って負け、現在、アメリカに追従してるとは言え、独自に国際政治を動かしたことがある。
 太平洋戦争でミスをしなければ、最強の戦艦ながらほとんどその威力を発揮せず沈んだ大和が活躍していたら、どうなっただろう。そんなことを考える人が少なからずいた。
 架空戦記小説は、80年代後半から噴出する。続きは次号で。

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No.503(Web版153号)2

 インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

 加藤弘一

インディの最後の物語である。
しかし、最初は若かりし頃のナチスとのお宝争奪戦から始まる。インディが若い。
ルーカスフィルムが保管した映像データからAI技術でコンピューターに取り込んだものにハリソンフォードがアフレコしたものらしいが、凄かった。
そして、1969年アポロ月着陸の年に定年を迎えるインディ博士の冒険が始まる。
お宝はというと、鏡で太陽光を集めてローマ兵を焼き殺した兵器(おおっ、ファーストガンダムのソーラーシステム)を製作した数学者で発明家のアルキメデスのダイヤルという謎の遺物である。
懐かしい友人達の助けを借り、インディは冒険を重ねて物語の核心へと歩を進めて行く。
今回は古代の謎なのでドキドキの罠はないが、ジェットコースターに乗ったかのように楽しかった。
そして、最後のシーンの為に是非、「レイダース/失われたアーク」を見ておいて下さい。

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