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No.509(Web版159号)3

 巨匠また逝く、豊田有恒をしのぶ

 中村達彦

 SF作家の豊田有恒が亡くなった。享年85歳。2020年9月に放送された「アナザーストーリーズ 運命の分岐点」で小松左京を取り上げた時も、昔のことを元気そうに話しており、まだまだ長生きされると思ったが。
 去年も3人取り上げたが、亡くなった人を語るのは気が滅入る。しかし故人の活躍を書くことは、ファンの義務と考え、送り出す意味でも書く。PMやLUNATICで前に書いたことも取り上げているが、ご了承を。
 豊田は、受験勉強中にSFを知って夢中に。1961年SFマガジンコンテストで「時間砲」、翌年に「火星で最後の……」が佳作入選し、20代前半の若手でデビューする。
 SFが世間に周知されず、近所の人に何を書いているか聞かれても、SFと答えられず、人類の未来を書いていると話す逸話がある。
 当時のSFマガジン編集長は、作家でもある福島正美。SFや推理小説を根付かせようと尽力した。福島は、豊田を起用し、いろいろ厳しいことを言いながらも、育てた。
 福島は、SFを日本に根付かせるため頑張っていたが、勢い余って1968年12月に複数のSF作家をこき下ろす。その中に豊田も含まれていた。大勢の作家が怒り、福島を糾弾した。
 豊田は、一度短編で書いたアイデアを再度、長編化して再発表するやり方を取り、タイムスリップものや宇宙もののアイデアで多くの作品を生み出した。初めにアイデア有りき。
 氏、曰く「字でマンガを書いている」
 小松左京や眉村卓ほどのヒット作はなかったものの、印象深い作品を書いた。
「時間砲計画」ジュブナイル作品で、中学生の英二は、アメリカ帰りのクラスメイト亜由子の父親が研究した、ある粒子をぶつけられたものが消えてしまう実験を見る。その後、亜由子や父親、英二までも大勢の人が消失する。一同は20万年前に、古代生物や明石原人が跋扈する世界へ投げ込まれたのだ。
 現実から非現実へのドラマや20万年前の動物についての造詣が深い。私は中学生の時、読んでSFの面白さに引き込まれた。続編で石津嵐との共著で、英二たちが恐竜のいる中生代末期に行く「続時間砲計画」もある。
 他にジュブナイルで「少年エスパー戦隊」「マーメイド戦士」などを発表した。
 また「タイムスリップ大戦争」「パラレルワールド大戦争」など架空戦記先取りの小説を書く。うち「スペースオペラ大戦争」は、31世記の未来人が歴史上の非業の死を遂げた英雄たちを蘇生させて、宇宙人と戦ってもらう話。歴史ネタもいろいろ出て来る。高校の時、図書館で読んではまり、同時に歴史の面白さも知った。
 1970年に書かれた「地球の汚名」は、遥か未来、宇宙人の国家連合に所属していた地球は、敵対する宇宙人の奸計で盟主を処刑され、地球を占領される。一見頼りない従順な新盟主のもと占領政策が進む。
 秘かに反撃を目論む航宙士たち。一方、地球人の中には、超文明を捨て、超能力を得て、生活するグループがいた。
 航宙士の青年とグループ娘に芽生える恋、地球人と友情を持ち、改革を試みる宇宙人など複数のドラマがある。
 面白い。アニメ化すれば良い。現代にも通用する話だ。実は、歴史上有名で、何度も映画やドラマにある事件のパロディだ。
 豊田の活動で有名なものは、手塚治虫のアニメ「鉄腕アトム」の脚本執筆である。SF設定を入れたドラマを書き「エイトマン」「スーパージェッター」などにも参加した。
 その後、脚本家から足を洗うが、「宇宙戦艦ヤマト」企画に当初から関わり、完結編までSFアイデアを提供する。提出してから、後の続編で用いられたものも。
 しかし西崎義展プロデューサーがSFを理解できず、没になったアイデア多く、ほとんど報いられないなど嫌な思い出が多かった。
 豊田が1983年に書いた「ライダーのレクイエム」。少女が兄を殺した犯人を追うが、犯人のアニメ会社社長モデルは(508号で加藤弘一さんが取り上げた話も出ている)その悪行も細かく書かれ、挿絵はもろに……。
 大御所であったが、若手のクリエイターたちの面倒を見た。日本SF作家クラブ会長を務めたことも。マンガ家すがやみつるやとりみきらと長く親交を結んだ。
 80年代半ば、都内に、クリエイターが集うスタジオパラレル・クリエーションを置く。和製ヒロイックファンタジーと言えるヤマトタケルシリーズ執筆と精力的に活動した。
 SFの他にも、古代史、朝鮮、原子力についても精通。逝去前まで多くの著述がある。内容に反発を招いたこともあったが。
 バイクが好きで、ライダースーツを着こなして、駆ける姿も。
 昭和に「あなたもSF作家になれるわけではない」。平成に入ってから、SF創作では御無沙汰。令和に「日本SF誕生ー空想と科学の作家たち」「日本アニメ誕生」とSFやアニメ黎明期を語る貴重な評論を記したが、SF創作でも、何か書いてもらいたかった。
 ヤマトでSF設定協力を務めた出渕裕(1月から始まったアニメ「メタリックルージュ」に参加)が「宇宙戦艦ヤマト2199」で総監督をやった時、喜んでいた。
 豊田は、ヤマトの権利で揉めていた松本零士と出渕を対面させる仲立ちをしている。松本も快く出渕や豊田を受け入れたそうで。
 私事になるが、10年前に、ある講演会に出席していた豊田にお目にかかる機会があった。「昔から先生の作品を読んでいました。影響を大きく受けました」と言うと「それは冥利に尽きる」との言葉を頂いた。
 先生有難うございました。

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