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No.512(Web版162号)3

 訃報続く、昭和、平成は遠くなりにけり

 中村達彦

 前回のPM原稿を書き終えた直後に、鳥山明死すの訃報を知った。
 中学3年生の時、同級生が「Dr.スランプ」を読んでおり、新しい感覚のマンガだと感じた。翌年、「Dr.スランプ」はフジテレビでアニメ化、高視聴率の人気番組に。
 裏番組で「鉄腕アトム」のリメイクが半年前から放送されていたが、「Dr.スランプ」に人気をさらわれた。「Dr.スランプ」放送開始から半年後、続いて、「うる星やつら」がフジテレビでアニメ化、こちらも何年も続く。
 ド田舎なペンギン村で、三枚目のマッドサイエンティスト則巻センベイに作られたメガネっ子のアラレちゃん。スーパーパワーを持つアンドロイド、超明るい女の子。アラレちゃんが人気を博した。
 うんちや月が擬人化され、スーパーマンやターザンのパロディ、阿保なキャラクターたち、いろいろSFがストーリーに盛り込まれた。作者の鳥山もロボットの自画像で、劇中に登場、阿保なキャラクターを演じた。
 私は当時、「Dr.スランプ」にはまったが、同じくはまった弟と「あははは、鳥山しょーもな、阿保だ」と笑ったものだ。
 本当に鳥山明はいろいろ失敗したが、見たものを絵にするセンスは凄かった。
「スタートレック」のスポックをモデルにスコップと言うキャラクターをデザインしたが、スポックに思い入れはなく、たまたま面白そうな人が出ていたから、使ったとのこと。
 マンガを描きながら、モデラーの趣味を持ち、ジオラマが高い評価を受けている。
 ジャンプの編集者鳥嶋和彦。鳥山が漫画賞に応募した作品に才能を見出し、一年も送った作品に「ボツ」を繰り返し、「Dr.スランプ」へ至る。その後も作品に厳しいアドバイスを繰り返した。
 この人も、マンガで描かれ、笑われた。敵役Dr.マシリトになっている。嫌いな人をモデルにと言われ、その通りに描いたそうで。
 鳥嶋は「ドーベルマン刑事」などを手がけた平松伸二も担当し、平松の自伝マンガ「そしてボクは外道マンになる」にも登場している(良い人でもあったそうで)。鳥山の友人で共作もやった桂正和も鳥嶋に見出された。
「Dr.スランプ」終了から半年後、「ドラゴンボール」を連載。世界的な大ヒットに。
 88年、就職して、会社寮で「ドラゴンボール」1巻を読んだ私は再びはまり、続巻も読んだ。弟もはまった。
 集めると、願いを叶えてくれる神龍が現れるドラゴンボールを捜す女の子ブルマと、無邪気だが強い力を持つ少年孫悟空の冒険。
「西遊記」「八犬伝」がストーリーに盛り込まれ、当初はドラゴンボールを巡るSFファンタジー色合いが強かったが、徐々にバトルものの色が強くなっていく。
 こちらもアニメ化され、88年にもうちょっとだけ続くよと言ったが、長い連載が続き、ジャンプの顔となった。
 悟空に立ち塞がる敵、倒したら更に強い敵キャラが出て来る。悟空の息子悟飯も出てきて、話がいささかマンネリ気味に。
 弟も延々続くことに飽きてしまった。
 更に鳥山はゲーム「ドラゴンクエスト」のキャラクターデザインも手がけ、これも大ヒット。当時、私の勤めていた会社で、上司が「ドラゴンクエスト」の発売日からしばらく会社を休んだものだった。
「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」以外にも短編を幾つか描いているが、それも面白い。
 鳥山のタッチは三頭身が多く可愛く。描写は過激ではないが、Hなシーンや人が死ぬシーンもある。それと別にマジュニアやベジータと、当初は冷酷非情だったが、話が進むと仲間になっていくドラマは魅力だった。
 鳥山逝去直後に、声優TARAKOが亡くなる。「ちびまる子ちゃん」マル子の役が代表作で30年以上続けたが、82年のアニメ「戦闘メカザブングル」のチルの声も。
 ザブングルと言えば、「Dr.スランプ」の中で、登場するロボットがザブングルのウォーカーマシンみたいなエピソードが。
 当時のアニメブームで注目され、サンライズのアニメチャラクターデザインも複数手がけた女性アニメーターいのまたむつみも3月10日に亡くなった。
 目の大きい女の子のキャラクターが特徴。ファン出身で、デビューからすぐに作画を担当するなどみるみる頭角をあらわした。
 小説「宇宙皇子」イラストやゲームテイルズオブシリーズのキャラクターデザインなど幅広く活躍した。
 4月に入ってから、山本弘が逝去。
 SF・ファンタジー作家で、トンデモ本と学会の活動でも知られている。
 78年に奇想天外のコンテストで佳作入選(同じコンテストでは、新井素子も佳作)、88年に「ラプラスの魔」と言う長編を記すが、ゲームデザイナー集団SNEでの活動も大きく、ゲームリプレイの小説も多く書き、ライトノベルの書き手で注目された。
 21世紀に入ってから、本格的SFでも注目され「神は沈黙せず」「アイの物語」「去年はいい年になるだろう」(新井素子の「絶句」同様、作者が主人公に)「MM9」「夏葉と宇宙へ三週間」と次々に発表。「詩羽のいる街」「BISビブリオバトル部」など他ジャンルの作品も書いている。作品は面白く幅広い、もっといろいろ読んでおくんだったと後悔している。マンガ原作やノンフィクションも。
 考証について、多くの人と論争した。
 6年前に病気で倒れ、リハビリ中だったが。
 昭和・平成のクリエーターが次々に亡くなった。もっと活躍して欲しかったが。

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