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No.516(Web版166号)1

「サイボーグ009トリビュート」「デッドプール&ウルヴァリン」のことなど

 中嶋康年

 福田さんを差し引いて「サイボーグ009」の記事を書くのは恐縮だが、今月の表紙として採用した河出文庫の「サイボーグ009トリビュート」、書店で新刊として並んでいるのを見てその場で即購入、先日読了したが、なかなかいいアンソロジーになっているので僭越ながら紹介させていただく。
 作品を寄せたのは、辻雅樹、斜線堂有紀、高野史緒、酉島伝法、池澤春菜、長谷敏司、斧田小夜、藤井大洋、円城塔の9人。それぞれの作家の得意分野を生かした作品が集まった。なかでもよかったのが、ゼロゼロナンバー・サイボーグ開発中のジェット・リンクはいかにして複数の候補の中から002になったのかという酉島伝法の「八つの部屋」という話。改造されてから60年後、メンテナンスを受けながらも老境の域に達してきたサイボーグたちにも忍び寄る敵の姿。初老のフランソワーズというのも新鮮というか、なんというか。(「wash」長谷敏司)。火星往還船の隔壁の水に満たされた区域で人知れず活躍する、白髪になり007から「爺さん」と呼ばれるピュンマ(「海はどこにでも」藤井大洋)。バレリーナとしてのフランソワーズを描いたのは斜線堂有紀、高野史緒、池澤春菜の3人。ロシアのバレー界の描写はさすがにロシアに詳しい高野である。007と中華飯店を営む張々湖が改造される前の中国での貧しい時代のことを知っている男と出会う斧田小夜の「食火炭」。ギルモア博士が亡くなり、「システム・ギルモア」としてよみがえる円城塔の「クーブラ・カーン」など、これほどまでに広い世界を構築できる設定を生み出した石ノ森章太郎はやはり天才である。
 さて、「デッドプール&ウルヴァリン」を観てきた。公開から1か月は過ぎたので【ネタバレ】を含みます。公開前は監督が「この映画は以前のマーベルを見てなくても楽しめます」とか言っていたようだが、なんのなんの、バリバリ以前のキャラクターが出てくる。私はよく見ている方だからわかったけど、マーベル初見の人は(そもそも見ないだろうが)どうだっただろうか。もう、冒頭からウルヴァリンの前の映画「LOGAN」観ていることが前提だからね。ディズニーのドラマ「LOKI」のTVA(時間変異取締局)も出ているし。この手の映画の楽しみ方としては、映画を見た後にネットのネタバレ記事をいろいろ思い出しながら読むことだなと思う。映像としては、見どころがたくさんある映画だったというのが私の評価です。

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