No.517(Web版167号)1
「逃げ上手の若君」のことなど
中嶋康年
アニメ「逃げ上手の若君」を見ている。この7月から放送が始まり、Amazon Prime をはじめ、主要な配信サイトで見られる。私はAmazonで見ているが、地上波では静岡放送の水曜日26:15からというから深夜枠である。
タイトルや絵柄からどこか ” ほんわか ” としたイメージのアニメかと思うと、さにあらず。血しぶきはとぶわ、生首は転がるわで結構スプラッターなアニメ。まあ、それなりに頻繁にギャグが入るのでそれほど重い感じにはなっていないが、総じて軽いだけのアニメではない。
物語は西暦1333年、鎌倉幕府が足利尊氏によって滅ぼされた後、逃げ延びた遺児、当時8歳の北条時行が諏訪に落ち延びて鎌倉奪還をめざすという実話に基づいている。原作は松井優征、「少年ジャンプ」で2021年から連載している漫画。「魔人探偵脳噛ネウロ」「暗殺教室」の作者だというから、作風の幅の大きい人である。配信開始当時は気にも留めていなかったのだが、評判が良かったので見てみたらなかなか面白いではないか。足利尊氏などとは違い、歴史物語の登場人物にはあまりなったことのない人物によく目を付けた。南北朝の時代というと、年末から年始にかけて読んでいた荒川徹の「風と雅の帝」がちょうどその時代だったので、あとからパラパラとめくってみると、やはり北条時行、1行だけ出ていた。この「風と雅の帝」の主人公、北朝初代天皇光厳帝も歴史小説には出てこない人物だが、とても面白かったです。
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