No.521(Web版171号)3
楳図かずおさんの恐怖とSFとギャグの話
加藤弘一
10月28日胃癌のため楳図かずおさんが亡くなられた。
88歳、同時代の漫画家の中では長寿の方だろう。
86の時に漫画ではなく絵画により「慎吾」の続編を完成発表したので、後は悠々自適に過ごしていると思っていたが、死の直前まで新たな作品を考えていたようで、もうスゴいとしか言い様のない人生である。
貸本時代を経て楳図さんは少女漫画家としてデビュー、登場人物は女の子のみと言う制約の中でヘビなどをテーマとした一連の恐怖漫画を発表し売れっ子になった。しかし、雑誌編集者の評価は低く原稿料も安いままだった。
当時、恐怖漫画に対して子供への悪影響とかが言われていた時代であった。
少女雑誌を離れてからの原稿料は3倍になったそうだ。
少年誌に活躍の場を移してからは「おろち」「アゲイン」「猫目小僧」等次々と作品を発表し、確固たる地位を築いた。
なかでも注目したいのが、「ウルトラマン」。オリジナルではないが楳図さんの持ち味が発揮されている。「怪奇が外ならSF、家の中なら恐怖。」と言う楳図さんの言葉がある。
バルタン星人の話では、外の広い空間ではウルトラマンとバルタン星人のバトルがあり、室内やトンネル等の狭い空間では細菌型のバルタンが人間の体内に侵入しバルタン型のモンスターに変身し、イデ隊員達に襲いかかる恐怖のシーンが描かれる。
正に楳図カズオワールド全開である
さて、話が変わりある日楳図さんが少年サンデー編集室を訪ねると何故か騒然としていた。
どうしたかと聞くと、赤塚不二夫さんの「モーレツ!!ア太郎」の連載が終わってしまいギャグ部門の大黒柱が無くなってもめていたのだった。
そこで楳図さんは「僕がギャグを描きます。」と申し出た。
「アゲイン」開始である。
黄昏のような人生を送っていた祖父沢田元太郎はふとした取り違えから主治医の若返りの薬の試作品を飲んで高校生になってしまう。新しい人生を得た元太郎は近くの高校に無理やり入学して新たな青春を味わおうとする。
「追いかけられれば恐怖、追いかければギャグ。ギャグは恐怖の一部だ。」
エネルギッシュに他の高校生を笑いながら追い回す元太郎の姿はギャグ漫画の主役だった。
漫画は哀愁を伴って終了するが、孫のマコトに人気が出てスピンアウトの漫画が注目される。
「まことちゃん」の始まりである。
「子供は何をするのか判らない。だから、面白い。」楳図さんの言葉である。
マコトはある日の青空バザールで、壊れたオモチャを並べた。
見た目は「キョーダイン」のソフビの人形である。老人が立ち寄り尋ねる。
「これは何かね?」 「これはガヒーン!
あれと合体してギャヒーンになるのだ!!」
「ギャッ!」と老人は腰を抜かす。
赤塚さんから「君のはギャグじゃあない」批判が来たそうだ。
まっ、永井豪さんも同様の批判を赤塚さんからもらったらしいから、若手は常に古株からの洗礼を受けるのかも知れない。
楳図さんが、初めてラストまでストーリーをバッチリきめて描いたものが「漂流教室」である。楳図さんは描きながら主人公と母の運命に思いを募らせたそうだ。
まっ、決めたのは楳図さんなのだが。
物語は未来に期待感を感じさせながらフィナーレを迎える。
しかしながら、どうしてこんな未来になってしまったのか+++;。
そんな思いを描いたのは、「14歳」である。
チキンのバイオ製造工場で生まれた鳥人間チキン-ジョージが人類に復讐を誓い、未曾有の事件が始まる。
やがて地球は環境異変が起こり人の住めない世界になってしまう。
「漂流教室」の再現である。
人類の生き残りはチキン-ジョージの作り上げたTレックス型の巨大宇宙船で新たな地球を探そうとする。彼らの見つけたものは。
ロボット物を描きたくなった楳図さんだがアトムのような人間型にはしたくなかった。
そんな時にとある工場を見学した時に、流れ作業で活躍するアームロボットを見つけた。
「これだ!!」と楳図さんはひらめいた。
「わたしは慎吾」である。
とある町工場にあるアームロボットのメモリーに男女の子供が様々なことを入力する。
ロボットはやがて自我を持つようになり、二人を親と認識するようになる。
現在のAIと呼ばれる存在も知識を積み重ねることでやがて自我を持つのかも知れない。
何て事を考えながら今回は終わります。
「猫目小僧」や「神の左手、悪魔の右手」などはまた後日。


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