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2025年11月

No.530(Web版180号)1

 来年の星雲賞メディア部門受賞作は?

 中村達彦

 1クール完結のアニメが主流になり、長いこと経つ。
 前年に発表もしくは完結したSF小説や映像作品、イベント、クリエーターに授けられる星雲賞。時々1クール放送のSFアニメも受賞している。
 今年春〜夏に多くのアニメが放送されたが、うち星雲賞メディア部門有力候補と噂されるのが「アポカリプスホテル」である。
 22世紀中盤、ウイルス様物質の大気中濃度増加により、地球は人類生存不可能に。人類は宇宙へ脱出する。銀座にあるホテル銀河楼では、女性アンドロイドのヤチヨが、人類が戻って来るまでホテルを運営するようオーナーから頼まれた。
 ヤチヨと同じアンドロイドも作業ロボットも寿命が来て、活動を停止していく。
 人類が戻って来ることを信じて、ヤチヨは、銀河楼の維持に余念がない。
 100年の月日が流れたが、人類は戻って来ないまま。替わりに宇宙人が飛来するように。人類より遥かに長命なタヌキ星人の一家が住みつき、その娘のポン子が、ヤチヨの真摯な人柄に惹かれ、銀河楼を手伝う。
 ヤチヨやポン子たちは、独自の料理やアルコールを開発。あげくは客寄せ、宣伝のため人工衛星を打ち上げるまでになる。
 数百年も経ち、銀河楼は宇宙人の訪れるホテルとして活況を呈する。緑に覆われ、野生動物が動き回るかつての東京。宇宙人が持ち込んだ植物に大気は浄化されていた。
 そして人類の子孫が、銀河楼を訪れた。ヤチヨは対面するが……。
 キャラクターデザイン原案は、SFやアニメの大ファンでもあるマンガ家の竹本泉。40年以上の長い活動がありファンが多い、竹本の参加に喜んだ人は多いだろう。コミカライズマンガ「アポカリプスホテルぷすぷす」も描いている。
 普段は真面目で可愛いが、何かトラブルがあると、意外な表情を幾つも持つヤチヨ。
 音楽も後押し、あちこち「?」のところもあるが、銀河楼の物語。作品の雰囲気は優しく微笑ましい。
 時には巨大なミミズと戦う「トレマーズ」のような話やヤチヨが廃墟と化した東京を散策するほとんど台詞の無い話も。タヌキ星人以外にも、銀河楼を訪れた異形の宇宙人たちとの物語があり、古いSFカラーを感じる。
 ほぼ同時期放送された「みどりの守り神」と比べてしまう。
 構成・脚本の村越繁。同時期のアニメ「ボールパークでつかまえて!」も手がけた。こちらも面白い群像劇。村越は期待の脚本家として注目される。
「アポカリプスホテル」は来年、星雲賞メディア部門を取るだろうか?
 2025年の星雲賞メディア武門は、実写映画「侍タイムスリッパー」が受賞した。
 幕末に京にいた侍が、現代の京にタイムスリップ。江戸時代を舞台にした映画の撮影に出演する。
 予算も、スタッフ、キャストも小さい自主制作映画だったが、好評をもって迎えられ、拡大上映。ヒットした。
 タイムスリップでは、7〜9月に「Turkey!」と言うアニメがある。
 長野県千曲市が舞台。高校生ボウリング部で不協和音が漂っていた。部の少女5人は、性格が異なり、それぞれ家庭に悩みを持つ。
 ボウリング場に集った少女たちは、落雷から戦国時代へタイムスリップしてしまう。
 小領主の姉妹と仲良くなり、世話に。
 違う時代の少女たちは交わり、現代と戦国時代の生活や思考のギャップが描かれる。
 ボウリング部も小領主の姉妹も悩みが明かされていく。現代に知識を活かし、ボウリングを伝えたり、温泉を掘る。深まる友情。
 再びタイムスリップが起き、少女たちは現代へ戻るが、史料から、戦国時代の姉妹が殺されたことを知り、助ける決意を。再び戦国時代へタイムスリップ。攻めてきた武将にボウリング勝負を申し込む。
 スタートまでスポーツものと思っていたが、第1話で戦国時代のタイムスリップものと初めて明かされ、当惑した人も多い。
 声優は豪華、作画も綺麗だが、考証や展開、おちは……。正直、お薦めできないが星雲賞メディア武門にノミネートされるか?
「銀河特急 ミルキー☆サブウェイ」は、合計40分ほどの3DCGのアニメ。12本のショートアニメで構成されている。YOUTUBEで視聴可能。
 亀山陽平が監督・脚本・キャラクターデザイン・制作した。
 遥か未来の宇宙、強化人間のチハルとサイボーグのマキナは、惑星間走行列車の清掃に従事するが、突然車両は暴走してしまう。閉じ込められた2人は、他の強化人間やサイボーグと力を合わせ、事態の解決に挑む。
 秋に入り、面白いアニメが40本以上スタート。その中で「永久のユウグレ」が注目。
 21世紀はじめ、アキラは幼なじみで愛しているトワサと襲撃されて、瀕死の重傷を負い、コールドスリープに。
 200年後に目覚めるが、世界は大きく変貌していた。何が起こったのかわからぬまま、アキラはトワサを求めて、目覚めた函館から東京を目指す。
 途中で出会った万能アンドロイドのユウグレ。トワサとうり二つの容貌だが、禁則事項といろいろ隠している。アキラはユウグレや知り合った少女アモルと旅を。様々な人間やアンドロイドと出会う。
 果たしてどんな真相に辿り着くのか?
 他にもアニメは、2人の少女が何らかの事情でほとんどの人が死に絶えた日本をバイクで旅する「終末ツーリング」。遥か未来、宇宙船の中で集団から凶悪な宇宙人を突き止める、ゲームが原作の「グノーシア」などのSF作品がある。話題沸騰なのは「東島丹三郎は仮面ライダーになりたい」だが。
 来年、星雲賞メディア武門受賞は如何に?

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No.529(Web版179号)3

 三度藤子・F・不二雄SF短編ドラマが

 中村達彦

「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」が、今年もNHKで放送され、全話視聴した。
 昨年もPMで取り上げたが、また紹介する。
 藤子・F・不二雄が1968年から95年に描いた短編SFマンガから選びドラマ化。2023年、2024年と続き、3度目だ。6月に4本、8月末から9月初めに7本(うち1本は前後編)が放送された。
 平凡な生活を過ごしていた主人公が、奇妙な出来事に囚われる展開。
 私は中学時代から、原作を読み、大体のストーリーは知っていた。SFを含んだ、爽快な結末が多い。品がある。世にも奇妙な物語と言ったところか。
 2023年の第1シリーズから、楽しませてもらった。面白い。こう言うことが未来に起きるんじゃないか、もしかしたら本当にこうなんじゃないかと一抹の恐怖を匂わせた話もある。
 SFアイデアは古い感は特にない。入門書として適している。
 多くの作品は、既にストーリーはわかっていたが、映像化したらどうなるか楽しみだった(第1シーズンに放送された「流血鬼」は昔小中和哉に映画化の話があり、企画倒れに終わり残念に思ったものだ)。
「えっこの人が」と何度も起用に驚かされた俳優の演技と、苦労して制作したVFXやアニメーションを取り入れ仕上がった。作り物と感じない。
 3度目11本のうち、後半の7本を取り上げる。
 最も楽しみにしたエピソードは「みどりの守り神」。前後編だ。
 旅客機の墜落事故に遭った少女みどりは、父母を失い、雪山で眼を覚ました時、かなり時間が経過していたが、どうなっているのかわからない。
 同じ生存者の坂口青年と山を下る。
 行けども行けども、人はおろか、鳥や獣、魚や虫の姿も無い。草木が生い茂るばかり。
 慣れぬ行程に。みどりは傷つき、遅れるばかり。一見親切な坂口もイライラを募らせる。
 無人の集落で過ごした後、急造した筏で川を下るが、生きるものの姿は無く、濃い緑が続くばかり。やがて筏は廃船と衝突、2人は投げ出されてしまう。
 しかし蔦に絡まり岸に打ちあげられていた。その前にお腹が空いた時、木の実があったり、怪我をした足が一晩経つと治っていた。
 陸路を進む2人の前に、やがてジャングルに呑み込まれたビル群が。事故から100年が経過した東京だった。
 残されていた新聞から、細菌兵器が漏洩し、人類を含む生物が死滅してしまったことが明らかに。
 坂口はショックで発狂、行方不明となる。
 1人残されたみどりは、自分の住まいへ向かう。緑に覆われていたが、墜落事故の前と同じ状態で残っていた家、何も希望が無くみどりは自殺する。だがその後……。
 救いのある結末。作品タイトルに秘密が隠されており、唸ってしまう。
 緑に包まれた東京は、CGで描かれた。機体に違わぬ映像化。昔は、ここまで作れなかっただろう。少年ドラマシリーズの匂いを感じたと言う声も。
 みどりは藤崎ゆみあ(新人のモデル出身)、坂口は大河ドラマ「べらぼう」で好演したばかりの宮沢氷魚、最後に出演する人物を仲村トオルが演じる。
 脚本・演出・VFXを手がけたキムラケイサクは、東映特撮のCGデザインを長く務め、昨年のシーズン2でも、「鉄人をひろったよ」を担当した。
 「みどりの守り神」は34年前にアニメ化され、YOUTUBEでも視聴可能。
 映画「復活の日」とあちこち重なる。
「みどりの守り神」マンガが描かれたのは1976年。「復活の日」映画は1980年で、小松左京の原作が書かれたのは1964年。藤子・F・不二雄は原作を読んだのか?
 他にも、藤子・F・不二雄ならではの、宇宙人と少年の心温まる交流「宇宙(そら)からのオトシダマ」、石をペット替わりに売る営業マンがタイムマシンと出会う「オヤジ・ロック」がある。
 続いて「マイロボット」「分岐点」は、ハッピーエンドと言い難いラスト。伝説の虫を巡るひと夏の体験「ユメカゲロウ」は夏の終わりに相応しい幻想的な物語。「異人アンドロ氏」は不思議な能力を持つ隣人に巻き込まれた、大人向けのドラえもん的な話。
「異人アンドロ氏」。本来は連作のエピソードであったが、本作発表の翌年、藤子・F・不二雄は逝去、絶筆となる。
 藤子・F・不二雄も石ノ森章太郎も手塚治虫も60歳で逝去。天命とは言えあと2、3年生きて、作品を遺してもらいたかった。
 基本的には原作に忠実だが、あちこち改変されている。
「みどりの守り神」では、みどりが自殺する前に、川で裸になり沐浴するが、NHKドラマでは、さすがにそれは……。
 第2シーズンの「じじぬき」は、死後の世界で、老人が妻を殴るシーンが原作であったが、泉谷しげると原田美枝子のドラマではカットされた。
 藤子・F・不二雄SF短編ドラマは沢山ある。ヌードやDVのシーンがあり、「これはちょっと」と思うものもあるが、「幸運児」「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」「ポストの中の明日」「倍速」など面白い話がまだまだある。
 来年シーズン4をやらないだろうか?
 前に言ったように星雲賞で「藤子・F・不二雄SF短編ドラマ」を取り上げた企画があってもと思う。
 そう言えば、浅田次郎原作の小説「母の待つ里」がNHKでドラマ化された。岩手の山里を舞台にした人情ものだが、これもSFと言えるのでは無いか?



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